雪の誘惑

半袖で過ごしていた南インドから帰ってきて
一週間後に、極寒の長野に向かった。
久しぶりに年越しを田舎で過ごすために。
いつも東京で過ごすのは、寒いのが苦手な上、
雪でも降られた日にゃあ どこにも出かけられないから。
案の定、到着3日後から雪が降り出した。
それも大粒の雪。
出先からの帰りだったので、運転を放棄するわけにいかない。
あまりにも激しく、大量に降るので前が見えない。
家に帰り着くには細くてカーブしている、田んぼ道を
走らねばならない。で、危うく道から落ちそうになった!
あまりにも久しぶりの雪に見惚れてしまい、
斜めに降る雪の方向へ車が寄ってしまったのである。
ふと我にかえり、慌ててハンドルを切り返した。
   これはまるで、人生における誘惑みたいだな・・・
また、目先のことばかり気になって、行くべき道を
見誤っている様(さま)
ともとれる。
この調子で降り続けたら、明日は大雪だなと
覚悟していたら、幸い数時間で止んだ。
昼間どんなに雪が舞っても、朝にはちゃんと太陽
雲から顔を出してくれるから嬉しい。
毎朝 サン・ゲイジングをし、毎年恒例 新年における
お客様への仕事をこなすべく、コタツに当たりながら
粛々と作業している。
いつも東京で5日間はかかる仕事量が、なんと
2~3日でサクサク進んでいった。
この自然環境がそうさせたのか、サン・ゲイジングの
お陰か、理由はともかく、こんなストレスのない作業が
できるなら、これからも毎年田舎で過ごそうかと。
今まで「寒さや積雪」というマイナス部分だけで避けていた
冬の田舎は、実は目に見えないプラスのオーラでいっぱい
だと、サン・ゲイジングやりたさでやって来た甲斐が
あったというものだ。
今年もあと数時間で終わろうとしている。
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数ある支援機関の中、今年もギビング・ハンズを選んで
くださりご愛顧にあずかりまして、誠にありがとうございました。
これからもより一層の努力をし、多くの必要とするニーズに
応えるべく 誠実な活動をしてまいります。
何とぞ 2011年も倍旧のご支援のほど、よろしくお願いいたします。
皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
よいお年をお迎えください。

指きりゲンマンと 『対価』 その2

達成』を “命” とし生まれてきたわたしは、自己の欲望を
トコトン追求し、それを手にいれるべく幼い頃から奔走していた。
なんて言うとカッコええが、要するに「わがまま」な子だった。
それに巻き込まれたのが、言わずもがな、母親。
   お母さん、必ず○○してね! 絶対だよ。
と、自己の欲求を満たすべく、共働きの忙しい親の
時間と労力を酷使しようとした。
しかし、親もわたしの欲求にいちいち応えてなんかいられない。
「はい、はい」なんて生返事しかしない親に、幼いわたしは
次の策を取った。
それが、『指きりゲンマン』 。約束破ったら針千本飲ませること。
   お母さん、嘘ついたんだから、針、飲んでね!
恐ろしい子だ。だが、母も負けちゃいない。
「飲んだよ」と、さらに嘘を付いてわたしをごまかした。
それからはお互い
わたし :「今、どこに針 ある?」
母   :「うぅ・・・ ちょうど胃のあたり、痛たたぁ」

こんな漫才のような会話の愚かな親子がいた。
母は確かにこの時期、わたしに嘘を付きまくった。
しかし、それはわたしの飽くなき欲求を制御する
術(すべ)がない苦肉の策だった。
このときもし、うちの親に時間と労力と金銭的な余裕があったなら
わたしの欲望は余裕で叶えられていたのかもしれない。
それは、子どもにとってはハッピーだ。
しかし、天の理(ことわり)で推し量ると、前半に多くの
得た(いい思いをする)ならば、その分、後半は少ない。
しかも後半は、多くの(辛い思い)をも飲むやもしれぬと。
すべては天に預けてあるわたしの徳分の量で決まるが。
そう考えたら、「うちの親は何もしてくれない」と嘆いていた
子ども時代は、実は、なんとラッキーだったことか!
もしそこで「何でも与えられる」という『徳分』を得たならば、
どこかでその『対価』を支払わないとならない。
でないと、小指が動かなくなった女性のように「嘘」を
付くことで「心地よい気分」を得続けたら、『曖昧』という
ブラック・エネルギーに覆われ、正しい判断基準が歪み
その対価として、自らの肉体を差し出さなくてはならなくなる。
このアニメのように、嘘のたびに覆われるブラック・エネルギー
が実際に見えたなら、こんな自己を破壊する自虐行為はするまい。
   なぜ、人は嘘をつくのか?
それは、『自己保身』からに他ならない。
自分を守るために嘘でキレイごとを並べ、心地よさに酔う。
その行き着く先は『自己破滅』という真逆の終着駅が待っている。
今、世界は保身からのキレイごとで覆い隠されたヒト・モノ・カネ
があぶり出されている、『再生における破壊』の時期である。
大事に至る前にあぶり出されるならいいが、未だ隠し続けていると
侑子さんの言うとおり「早く気づかないと、大変なことになる」と。
嘘を付きまくっていた母に、指きりゲンマンのこと覚えているかと
聞いたら、「まったく記憶にございません」、と・・・
毎日が大変で、きっとそんなことに気を留めている時代では
なかったのだろうと、今だから思える。
他人は騙せても、自分の心と天は誤魔化せない。
これからも、少なくともにだけは誠実でありたい。
この暮れ、羅針盤を得た次男坊と友人に会った。
    ねぇ、 クランプのホリック 読んだことある?
「読んだよ、全部。 『何かを得るには対価が必要』でしょ」
そう答えたのは、子どもではなく 親である友人。
あなたはいいから、子どもにちゃんと読ませてよ! と念を押した。
これからの時代、『曖昧』さが致命傷になるのだと、肝に銘じよう。

指きりゲンマンと 『対価』 その1

甥っ子と同い年の22歳を筆頭に、4人の子を持つ友人がいる。
彼女は子どもが18歳になると、本人に人生の羅針盤をもたせる。
その道具として、わたしの占星術リーディングを使う。
今年、二番目の息子が18歳に成るや、お呼びがかかった。
その子はとても神秘的なことに興味があり、お兄ちゃんがすでに
もっている「羅針盤」とやらが、欲しくてたまらい。
この子は 『天の理(ことわり)』 に守られるから、今からしっかり
学ばせてね、と友人に伝えると「なにを読ませたらいい?」と。
はじめは『アミ小さな宇宙人』でいいんじゃない、と言うと
「他には?」と聞いてきた。
   この年代の子が受け入れられやすい書物か・・・
ということで、「この年代」の甥っ子に聞くことにした。
「まぁ、『アミ』を何回も熟読すれば十分だが、
         クランプの『×××ホリック』でいいんじゃね?」
   それって、あなたがよく見ている あのギャグ・アニメ?
ときどき甥っ子の部屋を覗くと流れている、意味不明な
アニメのどこに、天の理があると?
「おめ~ みたいな怪しい女が出てきて、まぁ、侑子さんは
もっとカッコいいけど、次々と依頼者の願い事を叶えていく。
しかし、その願いを叶えるには、それに見合った『対価』
払わせる。その対価の選び方が、唸るほどミゴトなのさ」
   対価・・・  例えば、どんな?
この 『対価』 という言葉で耳がダンボになり、いっきにホリック
とやらが、低俗アニメから高貴な書物に格上げされていった。
「人に教えるつもりなら、まず自分で読んでみぃ」
と、アニメではなく、以前から漫画本で保存したいと言っていた
甥の口車にまんまと乗せられ、全巻セットを買わされた。
二日間かけて読み上げた「×××ホリック」。確かに唸った。
侑子と名乗るサイキックな女性が、この時空間に存在しない
館で依頼人を待つ。この空間は必要とする人にしか見えない。

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ある日、小指が動かなくなった女性が訪ねてきた。
小指を動かしてくれ、と・・・
そのとき侑子さんが渡したのは小指にはまる指輪
その時点で 『対価』 はいっさい取らなかった。
とにかく、その指輪を外さないようにと注意を促した。
また、女性が自分の職業(広告代理店)のことを説明すると、
彼女のまわりは雲のような黒いエネルギーに覆われた。
数日後、その女性を町で見かけた侑子さんの弟子、ワタヌキ
(四月一日と書く)があとを追うと、歯科医院に入っていった。
彼女はそこで働いていた。
「あれ? 館で話していた職業とは違うな・・・」
その後も彼女は久しぶりに会う友人に、今は小児科医だの、
これから彼氏とデートに行くだのと、嘘八百並べ立てていた。
嘘を付くたび、周囲には黒いエネルギーが立ち込め、彼女を
覆い隠していく。と同時に、侑子さんから渡された指輪が
劣化し、ボロボロになっていった。
ふと見ると、指輪が汚れていることに気づいた彼女は
交差点で信号を待っているとき、その指輪を外した。
その瞬間、交差点めがけてやってくるトラックにぶつかり・・・
彼女は、即死した。
侑子さんは、彼女が嘘をやめない限り、その報いとして『
が待っていることを見抜いていた。それを封印するために
指輪を結界として渡した。
だから「早く気づかないと、大変なことになる」と懸念していた。
運よく気づいたら、『対価』 を請求しようと思ったのか、
「もう、ここには来ることはないでしょう」とも言っていた。
結果、これ(自らの肉体)が彼女の 『対価』 となってしまった。

この話の冒頭に「小指が動かない」と訴えてきた彼女をみて
わたしはすぐ、『嘘』 の報いだ、とわかった。
それを甥っ子に問うたら、彼には嘘と小指が結びつかなかったようだ。
   指きりゲンマン♪ 嘘ついたら 針千本飲~ます 指切った♪
って知らないの? すると、「知らねぇ」だと。
今どきの若者は、そんな子どもダマシなことはしないのか、
わたしが小さい頃よく母親と 『指切りゲンマン』 していた話をした。
「子ども時代は、親にいろんな約束をさせられてたんだろ?」
と聞き返してきた。普通はそう思う。
しかし、わたしの場合は違った。
                            つづく・・・

邪気 祓い

この半年が【放棄】の時期ならば、逆に今、なくなると
困るものは、自分にとって、何か? と考えた。
命はさておき、『水、空気、塩』である。
空気はあまりにも生命と直結するので当たり前。
そういう意味では水と塩も、生命維持にはかかせない。
が、わたしにとっては、【浄化】アイテムとしても必須。
もう10年以上になるが、欠かさずやっている習慣として
朝・晩、バスタブにお湯を溜めて、塩風呂に浸かっている。
これが、激動人生を快活にこなす秘訣である。
いまでは塩なしの生活など考えられない。
それは国内だけでなく、海外だろうと持参する。
うちは食材を生協から自宅まで運んでもらっている。
毎週、3階まで重い塩袋を抱える兄ちゃんが、
あるとき思わず聞いてきた。
「ここは、漬け物でも漬けているんですか?」
    いえ、風呂に入れているんです
・・・・
いい迷惑だ。
浴槽に入れる塩の量は片手で一握り、もう一握りで
足の裏を念入りにマッサージし、さらに一握りで
髪以外の全身を塩で洗う。
これを一日2回行う。すると一袋が2日で終わると・・・
これでは生協の兄ちゃんが泣くわけだ。
塩は、本来人間の生命を支えるために必要不可欠。
古代ローマ時代には、兵士の給料は塩で与えられたと聞く。
ラテン語の塩=サラリウムが、サラリーマンの『サラリー』
の語源であるほど、一家を支える貴重な財産を意味した。
また食品だけではく、至るところで活躍する塩の
代表的な使用法は、「穢れを祓う」お清めだと。
家や空間のお清めだけでなく、邪気を直接入れている
自身の体内リセットに、塩風呂はとても効果的。
使う塩はJT塩(精製塩)でなく、自然塩
ただし、岩塩は『浄化』用としては適していない
岩塩は、地殻変動で海水が長期間封じ込まれて結晶化した
ものなので、そのときの『エネルギー』がこもっている。
パワーをもらうにはいいが、邪気祓いの浄化には海水から
とれる粗塩が適切。これは、風水理論からもうなずける。
  ※山からはパワーを、水(川、湖、海)は浄化をもたらす
また、塩風呂に入ったあとは、必ずお湯をすぐ抜くこと。
あとから別の家族が入るのはもちろんタブーだが、そのまま
放置して邪気入りの水蒸気を家中に蔓延させることも、
洗濯の水として使うことも避けること。
これから年末にかけての大掃除に、塩を使って拭き掃除
することで、来年度に入ってくる『風』が違ってくるかも。
わたしにとっては何よりも大切な塩。
生協の兄ちゃんに頼り切っている塩運びが、
来年も滞りなく続きますようにと祈り、年末を迎えよう。

冬至 【地雷復】 始まる

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 メリークリスマス
本日は、イエス・キリスト様のお誕生日、とされている。
実際は違うようだが、なぜこの日になったか・・・
冬至をこの季節に迎える年の瀬。
一番太陽が地上から隠れるとき。
    太陽 = 神、王、救世主
その太陽がいない時間が多い冬至は極陰。
易の消長卦で冬至は、『– –が五つ並び、
初爻(コウ)が『―』となる
   地雷復
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「一陽来復」
厳しい冬を経て、春の訪れを告げる
まさに、これから「始まるよ」 という再生の意味。
この陰極まってとなる冬至から、
また世界が始まる、その象徴としてイエス・キリストの誕生日
定めたという説があるようだ。
思えば、日本における最後の【現人神】(あらひとがみ)だった、
昭和天皇は晩年、マッカーサーから
「人間宣言」を促されてしまった。
それに抵抗してか、平成天皇は神の国 ニッポンを
象徴するかのごとく、冬至あたり12月23日生まれである。
で、殊もあろうに姪っ子の誕生日が天皇と同じなのである。
だから、彼女のハッピーバースデーとクリスマスと新年を兼ねて
うちではこの日を1年のスタートとして祝う。
これから日が長くなるので、サン・ゲイジングするにも
だんだん早起きしないとならない。
日の出とともに活動する、自然な生き方ができるよう、
お天道様に導かれていこうかな。

魔法のメソッド その2

   ニーラ 午後の仕事キャンセルして大丈夫だったの?
「仕事より、このチャンスを逃すほうが、もっと重大過失よ!
それに、あなたと会話できる時間も限られているしね」
わたしたちとハンク氏で向かった先は、とてもインドとは
思えない超近代的な建物の外資系 I T 企業。
敷地に入るときから物々しい検査が続いた。
ノートPC持参のわたしの荷物は厳重な調べを受け、
シリアル番号から製造番号まで記入させられた。
午後4時。
セミナールームというよりカフェテリアの空間に
プロジェクターと白いスクリーンが設置されていた。
主催者の青年がわたしに近寄ってきた。
「あなたのラップトップでCDをまわすことができないか?」
   え? ここって、I Tの最先端会社でしょ!
なぜわたしのPCを使う必要があるのか?
しかも運悪く、ちょうどCDドライブが故障していたのである。
なんでもセキュリーの関係(コピー防止)で、会社にある
携帯PCのCDドライブは使えないとのこと。
ハンク氏のプロモーションDVDを見てからセミナー開始
するはずだったが、あまりにも急に決まった講義なので、
メディア設備以前に、マイクすら用意されないままスタートした。
ASVプロモーションDVD
いつも蚊の鳴くような声のハンク氏しか知らないわたしは、
マイクなしで、50人の前で大丈夫なのか? と心配になった。
やおら、元 ヨーガ・インストラクターがハンク氏を紹介するや、
まるで何かが憑依したかのように、来月81歳になるという翁、
いや、聖なる神父様が話し始めたその威厳に満ちた
豹変ぶりに、思わず目を見張った。
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統合失調症という心の病がある。わたしはそのような患者を
変えて、皆さんと同じ類いの職場に連れてくることができる。
彼らは確実に変わる。 数年前、たとえどうしようもなくても!」

と、そこには今まで培ってきた氏の豊富な実体験と自信に
満ちた迫力が、わたしをその場に釘付けにした。
とっさに持っていたデジカメをビデオモードに切り替え、
ハンク氏の舞台を追うことにした。

    いやはや 恐れ入りました
山ほど入った薬の箱を抱えながら、事務所で見せる氏の
顔からは、棺おけに半分足が入っているかと思わせる
様相だが、この舞台を見て心が翻った。
    この方は永遠の現役だわ・・・
ちょうどこれを書いているとき、ニーラからメールが届いた。
「ねぇ。ハンク氏の原稿 もう読んだ? わたしはまだ1章しか
読んでないけど、気に入ったわ! すごく奮起してくる」
わたしにはまだ送られて来ぬ、未知なる原稿に思いを馳せ、
いったいこのプロジェクトがどんなカタチに展開していくのかと、
神妙に流れを見ることした。
http://giving-hands.jp/facilities.html → ハンク氏率いるASV

魔法のメソッド その1

「君も午後 空いているんだったら一緒に行ったらいいよ」
突然振られた会話に、戸惑った。
とうとう出来上がった、ハンク氏の本の原稿
いつものプロジェクトチームの出版促進会議中でのこと。
この本をどのようにプロモーション(宣伝)するかという
話題になったとき、ハンク氏右腕のアーナンドゥが提案。
   セミナーをやったらどうか?
すぐさま隣に座っていた広報部長のニーラが目を輝かせた。
「で、どこでやるか当てはあるの? アーナンドゥ」
以前ここのカウンセリングセンターにも通っていた、
当時はヨーガセンター勤務だった人物が、今や外資系の
ソフトウエア会社のメディカル(医療)部門にいるのだと。
その彼の会社のセミナールームでやったらどうか、
という話になった。
対象者は彼の部署の人たち。 → 医療関係者
午前11時から始まった会議で出た話題を、いくら知り合い
といえど、その日の午後に、しかも勤務中である会社で
実行できるものなのか?
という、段取り重視な日本人的発想で危惧する
わたしをよそに「君も行ったら?」と。
今回はあくまでもセミナーのプレゼンにすぎない「予告編」。
で、次回のわたしの渡印時に実践的なセミナーを
開くことにするから、と。
    うわぁ~ 本格的になってきたぞぉ!!
そうと決まった途端、ニーラが「わたしも午後、そこに行くわ!」
と意気込み、次の行動に移った。
「ファーザー、PC貸して。ボスに午後も休むってメールするから」
“どうしよ・・・ 彼に殺されるわ~” と漏らしながら、建築師の
彼女は午後の打ち合わせをキャンセルするべく画面に向かった。
その間、アーナンドゥは卒業したキッズ(患者)からかかってきた
電話対応に追われていた。
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同じことを何度も電話のキッズに諭すように繰り返しながら、
ようやく電話を切った。
「ふぅ~ 彼女は90%いい事をしても、10%できないことがあると
すべてがダメだという
。そのゲームを何回も繰り返し、
都度、わたしに承認を求めるんだ」
俗にいう【完ぺき主義者】のジレンマだ。
ありのままの自分を受け入れられず、100%のみにOKを出す。
Not OK (ダメ)な自分を否定し、攻撃するゆえ、そこに焦点が当たる。
結果、ダメになる確率を自ら押し広げていくというパラドックスに陥る。
こんな単なる性格的な心模様と思えるものまで、ここでは
真剣に取り組み、卒業キッズのフォローまでする。
とてもメンタルに問題があるとは思えない、現在外資系勤務の
青年が、ここで世話になっていたと聞き、いったい彼が
通っていた理由はなに? とハンク氏に問うた。
勇気を持つこと。セルフコントロールできるようになること
   ほぉ~ なんと高尚な・・・
   さすが 元ヨーガ・インストラクター
わたしがここで目にするキッズはもっと深刻で、うつ病、パニック
多くは統合失調症(旧名 精神分裂病)を抱える。
こんな性格改善から深い心の病にいたる若者をケアし、普通にして
世に送り出しているハンク氏率いるカウンセリング・メソッドの
プロモートができるとは、なんと貴重なことか。
わたしは実際、ここのカウンセリングを受けたこともなければ、
ボランティアで関わったことはない。
しかし、ここのメソッドを知っているニーラは声を大にして言う。
「あまりにも素晴らしいものなのに、あまりにも知られなさ過ぎる!」
パリから6年越しでボランティアに来ている20代の
社会福祉士 エミリーは言う。
「こんなメソッド(方法論)でカウンセリングしているところは
世界中どこを探してもないのよ! それがわたしが毎年
フランスからここに通って来ている理由」

彼女は夏の3ヶ月だけ母国フランスの障害者施設で働き、
その稼いだ資金を抱えてバンガロールに舞い戻ってくる、
完全無償奉仕でこのセンターに身を投じている。
今はヨーロッパで催される『選択理論心理学』の講座に
ここの精神心理学者ウシャと一緒に参加している。
と、このセンターと接触した人でないとその秘密はわからぬ
かのような、魔法のメソッドの口火がようやく切られることになる。
いったいどんな展開になるのやら、楽しみである。
                        つづく・・・

不思議な縁

「ふぅ~ ボクもうお腹いっぱい。眠いからおうちに帰る」
おいおい、どこにいくんだ? まだ午後の授業があるんだぞ!
と、追いかける先生。
フリーミールを施した学校でよく見受けられるのが、
食べ過ぎて動けなくなる子どもたち。
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今回の学校では、食べ終わった生徒がカバンを
背負って家に帰り始めたと・・・
普通ここで、学校に戻るよう促すのだろうが、あまりにも
子どもたちの幸せいっぱいな笑顔を見た先生が、午後
からの授業をキャンセルし、下校してもいいことになった。
   のどかだなぁ~
毎回思うのだが、わずか3,4歳の子どもなのに、食べる量が
半端じゃない。余裕でわたしの3倍は平らげる。
うちの食いしん坊の3歳の孫(男の子)でさえ、
せいぜいわたしの2倍だ。
インドの子どもは女の子といえど、お腹がはち切れん
ばかりによく食べる。見ていて気持ちいいくらい。
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「あんな小さい身体のどこに入るのかね?」
と、ガイドに聞くと
「そうなんだ。皆、ここで食べておかないと、またいつ、
こんなご馳走にあり付けるかわからないから、普段以上に
食べるんだよ。だから、いつも人数以上の食事分を用意するのさ
フリーミールを施す学校や施設は、できるだけ辺鄙な、
そして貧しい地域を探して行うようにしている。
今回は海岸沿いの漁村にある学校。
先生一同が出迎えてくれたわずかな時間に、先生自身は
都会から通ってきていると聞かされた。
交通費や通勤に費やす時間を考えると割りに合わないが
誰かが引き受けないと、村の学校は無くなってしまうからと。
それは病院をはじめとする人が生きていくに必要な機関が
村には少ない現状は、どこの国も同じである。
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さて、今回はギビング・ハンズのフリーミール・プロジェクトの
現地助っ人に、ノコムの理事長シャクティヴェル氏が活躍してくれた。
この「フリーミール・プロジェクト」は、
まさに、彼には打ってつけの役である。
彼の信奉する聖者ワララール・ラーマリンガ・スワミガルは、ひたすら
「フリーミール」を施すことに生涯費やしてこられたのだから、
その弟子たるや、チャンスがあればなんでも施そうと。
だから、彼の施設に日本から送る大量の古着も、
貧しい地域に行っては、彼が配ってくれている。
しかし聞くと、彼は今までどれほど騙されてきたことか
人がいいにも呆れてしまうほどである。
例えば、スマトラ沖地震での津波被害にかこつけて、
多くの自称慈善家が彼の元を訪れ、孤児院の写真を
撮っていったと。
で、その写真を餌に「津波被害に遭った孤児を救います」
と謳って寄付金を集める、慈善家の仮面をかぶった詐欺師たち。
彼の元にはいっさい孤児も寄付金もやって来ず、利用されただけ。
英語のわからぬ彼に頼まれて作った施設ホ-ムペ-ジも、
勝手にメールアドレスを使われ、サイトも利用されていたらしい。
今回、うちの英語ガイドが全面的に英語支援をすることに
なったことで、すべてが明るみになった。
彼は今までさんざんな目に遭ったからこそ、「もう、いいだろ」と
天からお許しを得た
ことで、わたしとの出逢いがあったのかもしれない。
ギビング・ハンズの寄付金で、施設を増設したのだと
庭に作った新しい空間を見せてくれた。
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これで男女の生活空間が区別できると喜んでいた。
あとは賃貸ではない、自分の施設がもてるよう、
今回は土地を確保する手伝いをしてきた。
今年の3月、寺院で突然出逢った彼との縁だが、
なんだか今後も深い付き合いになりそうだ。
    【袖すれ会うも多(他)生の縁】
きっと、どこかの生で一緒にフリーミールを施していたのだろう。
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その地を選ぶ理由

「見て。 どうやって彼らは移動していると思う?!」
ちょうど学生たちが下校する時間だった。
前を走るバスが左側に傾いていた。
いつも見る珍しくない光景。
そう、昇降口に人が鈴なりにあふれ、その重みで
車体が左にひっくりかえりそうな勢いで走るバス。
なのになぜ、ガイドは「見て」なんていうのか・・・
    え、ぇぇぇえええええええええ?
一瞬、目を疑った。
学生の手は確かにドア越しの手摺りを掴んでいるが、
足は浮いているのだ! それも数人。
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    あり得ない!!!!!!!
ということは、インドでは 『あり得ない』 とわかってはいるが
こればかりは ど肝を抜かれた。
バスは確かにゆっくり走っている。
まるで「ぶどう」でも吊るしているかのように、
その粒を落とさぬようにと。
とてもその遅いバスを追い抜かす気になれず、
ドキドキしながら様子を見守った。
すると、ひとりの学生の足が地面に着き小走りし始めた。
途端、大勢の歓声が上がり、バスはゆっくり停止した。
停まるバスの横を走り去るとき、運転手がなにか叫んでいた。
「おい、しっかり掴まっていないとダメじゃないかぁ~
           じゃないと、乗せてあげないぞ、タダで
と言ってるかのようだ。
この辺鄙な地域で学生が学校に行くには、遠くまで
通わなくてはならない。よって行政は通学するバスを
無料で提供している。
ここまでは、よき計らい。
しかしそのためのスクールバスはなく、一般客と一緒。
なのにバスの本数を増やすことはしないという、片手落ち。
であれば、学生自身が工夫するしかない。
何時間も歩くか、自転車通学か。はたまた器械体操選手
さながらの腕力とバランス感覚を身に付け、バスに
吊られる「ぶどう」に成りきるか。
いくらタダで乗せてもらう片身の狭い立場とはいえ、
座りはしないが、足ぐらいステップに乗せてよと言いたい。
こんな状態を強いられたら、日本の学生なら、少なくとも
わたしだったら学校に「行かない」選択を取る。
しかし、日本以上に競争社会の激しいインドでそれを
したら、一生【負け組=貧困】に喘ぐことになる。
周囲を見てそれを痛感している若者は、手摺りにしがみ
付いてでも学校に行くことを自己責任で選ぶ。
その根性は大したものである。反面、受験に失敗すると
自殺してしまう学生もあとを絶たないと聞く。
日本の若者のように人生の目的を見出せず苦悩
しているのとは対象的に、ここでは明確な目的は
あるが、達成できないことに苦を感じると。
だから、手摺りにしがみ付くことなど、なんてことない。
ホンの些細な筋トレである。
意図方法目的手段
意図や目的が明確であればあるほど、そこへ行き着く
方法や手段などは、いかようにでもなる。
にしても たくましい国だ。
皆、確実に 『今』 を生きてる。
どんな時代がきても最後まで生き残っていく種族
のひとつにインド人は確実に入るだろうと、今回の
水害やバス通学の学生たちを見て、そう思う。
だからこの国には、さまざまな虐げられた人びとが
生まれ出るのかもしれない。
どんなことをしても「生き抜く」精神と環境が揃っているから。
魂が鍛えあげられるには、もってこいの場となろう。
雲の上で両親を選ぶとしたら、自動的に国も決まる。
そのとき「よし、鍛えられに行くか!」と思ったら
いの一番にインドを選ぶのかもしれない。
ここでは単なる筋トレでなく、その理由【天の理(ことわり)】
を知ることができる、【信仰】という環境も整っているから。
天の理を知らずしてこの環境を与えられたなら、
理不尽極まりないと、他を羨み、自己を卑下し、
最終的には天さえも恨んでしまうことにもなりかねない。
心配性のうちの母が見たら、ショック死するかもしれない
未だに見慣れぬ奇抜な光景に出くわすたび、彼らの
「たくましさ」と「生き抜く」パワーを学ぶために、ここ
インドに来させられているのだと、素直に思うことにした。
でないと心臓がいくつあっても足りない・・・

リセット そして始まり その6 【準備】

インドでは毎日、日の出前から活動しているというのに、
長雨と忙しさで出来なかったサン・ゲイジング
朝、車で移動しながらふと気がつくと、太陽が窓から
見えてきた。ようやくインドで初 ゲイジングできるかと、
車外で朝日を眺めることにした。
スーリヤナコイル(太陽の寺院)に行く道すがらの
           サイ・ゲイジングとは、吉兆だね~」
と、ガイド。
言われてみれば、確かに。太陽神を奉りに行くので、
ホンモノの太陽を見せてくれたかのようだ。
朝のお勤めが終わって車に戻ると、ガイドが新聞を差し出した。
「この記事を見てごらん。モルジブはどうやら将来
沈むみたい
だと、その国の大統領が明言しているよ」
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DINAKARAN(Daily newspaper) 6th Dec. Monday 2010
Prevention is better Then Cure
Because of climate change within 10 years,
50 Lakh people would die only natural disaster.
After 10 years, every year 10 Lakh will die for 20 years.
Now every year 3.5 Lakh peaple die in the world.
Mohamed Nazeed: President of Maldives
Climate vulnerable forum announces

ディナカラン(毎日新聞) 12月6日(月)2010年
     対処より予防策を
昨今の天候異変により、今後10年間で500万人の
天災による死亡者が世界で予測されるだろう。
10年後からは毎年100万人が20年間で滅ぶことになる。
現在世界中で天災による死亡者は、年間35万人にのぼる。
モハメッド・ナジード:モルジブ大統領
クライメイト・ワルネラブル・フォーラムより報告

これは、そのときホットな話題を載せる【編集コラム】の記事。
これから10年間に500万人死亡というと、年平均50万人
その後の10年間で、毎年100万人だと・・・
日本での死因第一位のガン死亡者が年間34万人。
世界規模で、それ以上の人が自然現象で死亡するということ。
それもあと10年後ではなく、今、この瞬間からカウント
されている数字だ。
この天候フォーラムの主催者であるモハメッド氏は
将来の自国の消滅を前に、どのような予防策をとって
いるというのか。予測よりもそちらが気になるところである。
自国が【沈む】ということは、国民をどこかの国に避難させる
以外対策はない。そんな余裕のある国があるのだろうか。
たとえあったとしても、そこも10年で500万人死亡対象
となる、同じ地球村である。
こうなったら『避難』を考えるより、それぞれの地域で与えられた
課題を甘んじて受けるしか道はないのかもしれない。
南インドでの浸水被害のニュース欄に、マザー・テレサの
出身地、アルベニアでも雨の被害が生じていると
報道されていた。
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世界規模で異変が起こっていることは間違いない。
日本で怪我したわたしの足指を癒してくれたマヌカ・ハニー
も、世界中の多くのハチたちが忽然と消えていなくなった
ゆえ、「はちみつ」が収穫できなくなっていると聞く。
ハチは聖なる生き物。なにかを察知し、それこそどこかへ
【避難】してしまったのかも。まるで古代マヤ人のように。
日本でぶつけて怪我をしたのは【薬指】。
しかも爪のつけ根
有名な健康法「爪もみ療法」によると、薬指は交感神経に
つながるとか。だから揉んではいけないと(揉む説もあるらしい)。
この指に傷を負ったということは、激しく動き回る我が身に
「少しは休息せい」と促すためかもしれぬ。でなければ
休憩せざるを得ない状況に陥るぞと。
浸水する地域で人びとの活動が停止している様子を
みて、「ここでは時間が止まっている」、そう感じた。
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寺院から外に出ると、ひとりの老人が施しを乞うてきた。
ガイドが小銭を渡したら、老人がつぶやいた。
「ここの神に、たった5ルピーしか  
          施さなくていいと言われたのかい?」
 と。  ガイドはつかさず答えた。
「Yes そう言われたんだよ」
「・・・ じゃあ しょうがないねぇ~」
こう引き下がる老人の潔さに、ニコニコしながら
ガイドはもう 5ルピーを渡した。
こんな神様を介した粋な会話を楽しむ、
浮世離れしたインド人を、今さらながら微笑ましく思った。
                          Fin