みんなで考えよう!世界を見る目が変わる12の真実
●だまされて売られていく女性たち
君が発展途上国に住んでいて、とても貧しかったとする。
もし誰かから「豊かな先進国に行かないか?いい仕事を紹介しよう」と誘われたら、
すぐにその話にとびつくよね。でも、先進国に着いたとたんに売り飛ばされ、
奴隷のように売春の仕事をやらされる。
給料は「密入国の費用だ」といってとりあげられ、警察に逮捕されれば強制送還されてしまう。
故郷に帰っても人びとから白い目で見られ、
つらい思いをしなければならない・・・・・女性の人身売買はこんなふうにしておこっている。
いまでも、年間に約12万人の女性が西欧に人身売買されている。 その多くは旧ソビエト連邦諸国や東欧の出身だ。 アフリカ、アジア、南米から送られてくる女性もいる。
日本でもフィリピンの若い女性が「エンターテイナー」という資格で入国し、 奴隷同然に働かされている。
●恐るべき犯罪ネットワーク
女性を売買する取引業者は、巨大な犯罪ネットワークをつくりあげている。
まずは女性たちを誘う職業紹介所がある。
そしてパスポート偽造業者、密入国のための輸送業者がいて、
新人女性の品定めをする場所、女性たちを閉じこめておく建物があり、
インターネットで客を集め、売春施設に送る。もはや一大産業といってもいい。
この人身売買産業で、年間70億ドル(8120億円)が動く。
同じようなネットワークが世界各地にあるんだ。
●被害にあった女性たちのケア
国連は2000年に「女性や子どもの人身売買を取りしまり、罰する」ための議定書を採択した。 この議定書は、人身売買を禁止する法律や、
被害にあった女性たちの保護を各国に求めるものだ。
被害者の女性のほとんどは、不法入国者としてすぐに国外追放になる。 でもそれでは女性がうけた心身の傷はまったくケアされない。 ″犯罪の証人〝を失うことにもなる。
イタリアでは証人保護法という法律をつくって、被害者に6カ月のビザを与え、 カウンセリングを受けさせている。 おかげで人身売買を告発する起訴件数は4倍に増えた。
アメリカも臨時のビザを出し、裁判がつづく間、女性たちがアメリカに滞在し、 裁判で証言できるようにした。
犯罪の取りしまりに向けて、少しずつ前進している。
「みんなで考えよう 世界を見る目が変わる50の事実」より
ジェシカ・ウィリアムズ 著 草思社