ギビングハンズとは なぜどうして

◆ なぜインド中心の活動なのか

途上国での貧困の連鎖をストップさせるためには、 子どもたちに教育とそれを活かす職業訓練を受けさせること。それにより職の確保がスムーズにでき、国の財源を安定させられ、 次世代の子どもたちに遺伝的貧困を伝承させないことが 最重要課題だと考えられている。

そのことが近い将来、現実化しやすい国という意味で、 ギビング・ハンズではインドとその近隣国への活動に焦点が当てられている。

支援している孤児院でよく会う、スウェーデン人の福祉士に、 「あなたの活動はインドだけですか? アフリカはもっと悲惨ですよ!」と 問われたことがある。

もちろん考えていないわけではないが、 インドという国の秘められたパワーを考えると、 ほんの少しの援助で大きく飛躍できる可能性がある この地域をまず手がけることで、 間接的に他国への影響も大きく広がるだろうと考えている。

 

その理由としてインドという国は:

・教育レベルが非常に高く優秀な人材を持ち、かつ高等教育(ITなど)にも優れている
・人口が世界第2位(世界の子ども人口の1/4がインド人)の世界最大の民主主義国家である
・英語圏であることと市場経済が結び付いている
・宗教国であることで国民のボランティア精神が根付いている
・貧しい国なのでスタート地点は低いが、だからこそ成長余地が大きい
・医療技術は非常に高い水準を持つ

 

などが挙げられる。

何といっても『民主主義+英語』は、 世界の成長に一番乗れる要素が揃っている。また、 その教育レベルは目を見張るものがある。さらに、高等教育を最大限活かした、 世界に通じるIT産業を持つことは大きな強みである。

そして世界第2位の人口をり、かつ民主主義国家となれば、 その秘められた飛躍の可能性はさらに大きく、 その中で育てられる子どもたちへの教育支援は とても有意義なものとなり得る。

 

今でも貧困から助かるはずの病で命を落とす子どもは後を絶たないが、 反面、医療技術の水準は極めて高いのだから、 治療さえ受けられれば平均寿命もぐんと延びるであろう。 また、宗教コミュニティで伝統的に慈善活動を行ってきたという土壌があることから、 慈善家たちが貧困層を助ける行為が古来からさかんに行われてきている。 よってこの国はNGO大国といってもいいくらい慈善民間団体が非常に多く存在する。 これら現地の団体と協力体制を組むことで、大きな相乗効果が生まれる。

これらの要素を踏まえてみると、ある一定ラインを超えたところで パラダイムシフトが起こる可能性がある国だと思われる。 実際2007年度の世界長者番付けによると、資産10億ドル(約1,171億円)を上回る富豪の数は 世界には946人いて、このうち日本人は前年より3人少ない24人、 経済成長が続くインドは前年の24人から36人に増え、 アジアにおける長者数は日本を抜いてインドが首位の座を確保している。 それも上位層では日本人よりも圧倒的にインド人が多いのである。

このようにほんの少しの呼び水で一気に大地から水があふれ出すように、 今、インドという国は熱く燃えている。 もちろんアフリカをはじめとする多くの子どもたちに生命の危険が生じ、 幼い命が毎秒すごい勢いで失われている国々の存在も認識している。 そこではすぐにでも手助けが必要なのはよく理解できる。

ただ、そこで取り組む慈善活動は、例えるならば、 カラカラに乾いた大地に井戸を掘るようなもので、 その前にどこを掘るのが適切かを探すことからはじめる必要がある。 その課題を組織的に行うには大量のエネルギーとマンパワーが必要となろう。 それを十分カバーできるのは国際規模の大きなNGOが適任なのではと感じている。

もちろん個人的にできることはあるから、 わたしなりにそのような団体に寄付させていただいている。 組織にもそれぞれの役割があるように、 頻繁にインドに赴くわたしにまずできることからはじめることにした。

また、現実インドはどんなに経済成長が裕福層を膨らませているといっても、 貧困の坩堝は広がる一方である。インドは依然として平均値を取ると非常に貧しい国である。 外務省の統計によると、 2005年の国民1人当たりのGNI(国民総所得)は720ドル(約85,000円)に過ぎず 中国より明らかに低い。 日本の国民1人当たりのGNIは38,980ドル(約456万円)に達するのだから、 単純に考えただけでインドは日本の54分の1以下の生活水準ということになる。 しかもこれは平均値であるから、 実際、貧富の格差が激しいインド下級層の生活レベルは、 日本の100分の1とも200分の1とも言えなくはない。 これは世界の貧困層の3分の1がインド人だという背景が物語る事実であろう。

インドには民主的な行政システムやさまざまに配慮された 政府のプログラムがある。しかし、それがうまく機能せず、 活用されていないことが問題である。なぜなら親が読み書きできないゆえ、 それらの情報を得ることができず、 本来受けられるはずの行政サービスも受けられていないからである。 これではますます厳しい環境の中で子どもたちが育てられていくことになる。

※2001年度の国民調査によるインドにおける識字率(読み書きができる)は 65.38%(男性75.96%  女性54.28%)。つまり女性の2人に1人は字が読めない

これらの理由で、教育さえ受けられれば、少なくともチャンスは広がるし、 大いに活躍できる土壌がすでにある国を、まずは支援していくことにした。 そして支援を受けて貧困から脱却した人々が、 次は社会のために貢献できる立場となって、その地域に、国に、 そして他国にも貢献できるようになっていくことを期待しようと。 実際支援された子どもたちの多くが、社会福祉に携ったり、 看護師や医師になっていく姿を目にするたびにとても温かい気持ちになる。 このように、受けた恩恵が還元され、それが国内外に広がっていってほしいと。

 

今後のインド国内におけるNGOの位置付けが、支援を受ける側(被支援国)から、 する側(支援国)に転換されるのも近い将来あり得るかもしれない。 何を隠そう、この日本においても戦後の動乱時代は、 ユニセフから学校給食の脱脂粉乳配給などの援助を受けてこの時代を乗り切った背景がある。 この事実を知ったとき、恩返しせざるを得ない気持ちになった。 あれからわずか70年足らずで日本は今、立派な支援国になっている。

といっても日本人のひとり当たりの寄付額はアメリカ人の100分の1にも 満たないのだから、慈善に対してはまだまだなのかもしれない。

※統計局がまとめる「全国消費実態調査」(1999年 実施)を参考:

日本
・1世帯当たりの年間寄付金額は、3,270円 = 年間収入の0.05%
・全国全世帯の年間寄付金額(推定)は、約1,500億円
・実際に寄付支出をした世帯の割合は、およそ3割

米国
・1世帯当たりの年間寄付金額は、$1,620(194,400円)= 年間収入の3.1%
・全国全世帯の年間寄付金額(推定)は、約20.5兆円
・実際に寄付支出した世帯の割合は、およそ9割

まずはできることからでいいではないか。何かはきっとできるはず。 そんな思いをに変えて、 今後もこのインドという大国と向き合っていきたいと思っている。

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